#29 ページ29
結局最寄り駅に着くまで渡辺くんに守ってもらいながら、私たちは電車から流れ降りた。
酸素も薄かったのか、久しぶりに感じる外の空気で生き返るような気持ちだった。
と、同時に蘇る先程の恐怖。
背後に感じた嫌悪感を思い出し、私の手は再び僅かに震えていた。
渡「なんでいんの?」
渡辺くんの問いかけにハッと我に返る。
「…渡辺くんこそ」
渡「俺はいつもこの時間だもん」
…え、てことは?
「遅刻じゃん!」
渡「今日電車停車したしな。…けどまだいける」
「え?」
渡「行くぞ!」
その言葉と共に握られた手。
え?
え!?
えー!!??
気付いたら渡辺くんに引っ張られながら私たちは全速力で走っていた。
今日は走ってばっかりだ。
それに、渡辺くんに手を引かれてばかり。
私たちは会話も無く、とにかく走って、走って、走りまくった。
・
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ゼェゼェと肩で息をしながら教室の前に来たのはチャイムが鳴る2分前。
繋いだ手はいつの間にか解けていた。
渡「っしゃあー!いつも通り!」
そう言いながら渡辺くんは、額に汗を輝かせて得意気に笑ってる。
「…信じ…らんない…いつも…こんな…ギリギリで…」
私はなかなか呼吸が整わず、息絶え絶えに渡辺くんに言葉を返す。
渡「これで(人1)さんも、開始2分前登校の仲間入りだな、笑」
そして「んじゃね!」と、
渡辺くんは何事も無かったように、隣の教室へと姿を消した。
フラフラした足取りで教室に入ると、
久「A!大丈夫!!?もう絶対遅刻かと思った!」
「私も…そう…思った…、けど…」
まだ乱れた呼吸のまま話す私に、久美がお茶を差し出してくれた。
久「けどなに?!」
もらったお茶を一気飲みしてから、
「渡辺くんが…助けてくれた」
そう伝えた所で、ホームルームを告げるチャイムが鳴った。
・
・
・
久「つまり痴漢に合ったAを渡辺が助けてくれたって事?」
2限が始まる前の10分休み、久美が再び今朝の詳細を私に尋ねる。
「うん。初めてあんな混む時間帯に特急なんて乗ったもんだから、もう本当パニックだった」
久「…もぉ〜、私がもっと早く女性専用車の事伝えとけば良かったね…ごめん」
久美はシュンとしてしまい、心配そうに眉を下げて私の背中をさすった。
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R(プロフ) - なおさん» 何度も読んで頂き嬉しいです🥺こちらこそありがとうございます! (8月17日 22時) (レス) id: 7b806d3bae (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - 初めまして!このしょっぴーと主人公ちゃんが大好きですー💕実は何度も読み返していて😊今日もきゅんきゅんさせて頂きました♥️ありがとうございます!続きもまた読みます💙 (8月17日 16時) (レス) @page50 id: 61924ce533 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - みみみさん» 嬉しすぎます!ありがとうございます🥺✨ (2023年4月5日 20時) (レス) id: 7b806d3bae (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - 素敵すぎです!あー、しょっぴーに惚れてしまった♡ (2023年4月5日 13時) (レス) @page50 id: 10d256d720 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - ピカンチ★さん» この作品を見つけて下さりありがとうございます🥺💙ハニレモ良いですね☺️🍋お時間がある際に良かったら番外編も覗いて下さると嬉しいです🥺💙 (2022年6月25日 19時) (レス) id: 7b806d3bae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:R | 作成日時:2022年5月22日 14時