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ふと時計を見れば、40分をもうだいぶ過ぎていることに気づく。
落とし物の対応をしていたら外に出るのが遅れてしまった。Aは普段ならもう通りすぎてる頃なんだよなー.......
と思って外に出ると。
雪ヶ丘高校の生徒が集団になって何やらがやがやと騒いでいる。
「...ん、どうしましたー?なんかあった?」
声をかけたら、集団の中から一人、見たことのある顔が俺の方を見た。
「.......あ、佐久間さん、ですか?」
「!」
ツヤのあるテクノカットの黒髪が印象的な、目黒くん。何で俺のこと知ってるんだ?
「俺、Aさんの知り合いの目黒って言います。あの、Aさん」
「.......?え、」
何事かと近寄ると、集まっていた人の真ん中には意識を失って地面に倒れているAがいた。
「誰も見てなかったんで原因とか全くわかんなくて、どうしようかって言ってたところだったんですけど。
あんまもたついてると時間やばいし、けどAさん置いていくわけにもいかなくて」
正門はすぐそことはいえ、雪ヶ丘高校は8時50分が遅刻のライン。
心配してくれているのはすごくよく分かるしありがたいけれど、遅刻はまずい。
「とりあえず、俺が運ぶから。みんなは早く教室に行くこと!急げー!」
そういうと、みんな今初めて時間に気づいたのかはじかれたように走り出す。
「A、Aー?聞こえる?俺だよ、聞こえたら返事して」
肩をぽんぽん叩きながら声をかけてみるけれど、やっぱり反応はない。
熱中症というにはさすがにまだ暑くないし。
どうしたんだろう、寝不足かな...。Aはわりと早寝早起きを心掛けてるはずなんだけどな。
交番の札を「巡回中」に変えてからAをおんぶする。
「保健室、の方がいいですよね」
「そうだよね。よし、目黒くん、保健室まで案内してくれる?」
「あ、はい」
もう向こうの方に見えている正門へ向かって歩き出す。
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作者名:灯莉 | 作成日時:2023年7月22日 2時