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「あのガキさえ、いなけりゃ、」
「おい」
「なあ佐久間、」
「っ、おい!!」
この隙に抜け出そうとした瞬間、ナイフが勢いよく振りかぶられて、頭のすぐ上のコンクリートブロックに突き刺さった。
「っおい離せ、こんなことしても意味ないだろ!!!」
「選べよ佐久間、あのガキを俺が殺してお前が助かるか、今ここでお前が死ぬか。
俺たちか、あいつか、お前が決めろよ......!!」
据わった目で問いかけてくるそいつに、俺は即答する。
「決まってんだろ。...殺れよ」
反射で目を閉じて痛みに覚悟した瞬間。
「さっくん!!!!」
ナイフを掴んだ腕にAがしがみついて、すんでのところで止められていた。
「被疑者確保!」
「中にいた男の子も無事です」
あっという間にあいつは周囲の警官に取り押さえられ、Aも目黒くんも保護されて事件は終局を迎えていた。
と、思われていた。
それが起こったのは、取り押さえられてパトカーに被疑者と乗り込む瞬間だった。
「はい、乗って。...おい、」
「……っ、あああああああ!!!!」
物凄い叫び声と共に左右の警官を振り切って、あいつが隠し持っていたナイフを手にAへと腕を振り上げるのが見えた。
「Aーーーーっ!!!」
気づいたら、足が動いていて。
間に合え。
絶対に、あの時と同じことは。
今、俺が守るべきものを失わないように。
動けないでいるAとキラリと光ったナイフの間に体を滑り込ませて、その身体を腕の中に閉じ込める。
「……っ!!!!」
背中に鈍い痛みが走って、そこがおかしなくらい熱を持ちはじめた。
「.......さっくん?」
「..........A」
「さっくん、ねえ、ねえ!!」
「...良かっ、た、無事で」
そしてそのまま、ぶつりと視界が真っ暗になった。
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作者名:灯莉 | 作成日時:2023年7月22日 2時