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部屋の中には、ベッドで寝息をたてるさっくんと私と目黒先輩。
「おこがましいかもしれないんですけど」
「.......」
「私、自分の気持ち、伝えます。だから先輩も」
「...ほんとさ、そういうとこ」
「え?」
「先輩と、似てるわ」
「..........」
目黒先輩は笑っていたけれど、その顔はどこか悲しそうで。
やっぱり、あの時私に伝えようとしていたことって。
「.......ごめん。」
あの時も言われた、「ごめん」の一言。
初めて名前を教え合ったとき一度だけ「おっけ、Aちゃんね。覚えた」と呼ばれた名前。
きっと私のことは好きでもなんでもないのに、一緒に帰ってくれた日もたくさんあった。
私が誘拐されて後から追いかけてきてくれた時、「..........Aさん見てると、俺、自分がすげえ惨めになる」とつぶやいたこと。
目黒先輩は最初からあの先輩が好きで、でも視界には入れなくて。
だから似ている私を見て、あの人を重ねていた。
分かってる、本来は私が怒ってもいいところだって。
けど、先輩に恋するせつない気持ちは私にも痛いほどよくわかるのだ。
「俺のわがままな気持ちでAさんのこと、傷つけたと思う。」
...ちゃんと、区切りつけてくるから」
「.......区切りじゃなくて、きっと『始まり』だと思いますよ」
今の私にできる、精一杯の応援をする。
目黒先輩は少しだけ驚いたように目を見開いて、「ありがとう」と部屋を出て行った。
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目を開けたら、真っ白な天井が広がっていた。
あ、これアニメとか漫画でよく見るやつじゃん。マジであるんだ。頭の片隅でそんなことをぼんやりと考える。
「っ?!」
起き上がろうとした瞬間背中に激痛が走って、そうだ俺…と事の顛末を思い出した。
(ん……?)
そこで手に妙なぬくもりを感じて、目を動かして見れば俺の手を握ったまま寝ている愛しい存在がいて。
「………A?ん゛ん゛っ」
名前を呼んだら、掠れた声しか出ずに思わず咳払いをするとAが目を開けた。
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作者名:灯莉 | 作成日時:2023年7月22日 2時