My Destiny Ⅱ (ページ17)

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渡辺side

渡「ありがとうございました」

最後のお客さんを見送り、ふぅと一息つく。今日も怒涛の1日だった。

片付け中も集中力が続かず、色んなものを落としてしまう。すると桃瀬さんが駆け寄ってきた。

桃「渡辺さん、今日なんかおかしくないですか？」

渡「え？そう？」

桃「カラーの色とか会計とか間違えそうになったり、物を落としたりもいつもしないのに」

彼女の言う通り、Aの事が気になって集中できてなかったと思う。プロ失格だ。

桃「分かりました。Aさん絡みでしょう？」

まさか見抜かれるとは。隠しきれないと悟った俺は、デートの事を話した。

桃「その目黒って人に取られないか心配なんですね」

渡「！そういう訳じゃ、」

俺が否定しようとすると、彼女はため息をつく。少し考えてから、俺の目を見てこう言った。

桃「はっきり言わせてもらうと、渡辺さんは言葉が足りないです。"言わなくてもわかるだろう"はダメですから！」

普段とあまりにも違う彼女に唖然としてしまった。話を聞くと、今までは俺に嫌われるのが怖かったが吹っ切れたらしい。

渡「ごめん、」

きっと付き合ってた時も、俺に対する不満たくさんあったんだろうな。好きとかも1回も言ったことなかったし。

桃「私の事はもういいんです。でも、Aさんにはちゃんと思ってること言葉で伝えてください」

「片付けはしておくので早く行って」と店から追い出されてしまった。行くったってどこに？家？いきなりはまずいから連絡する？あー分からない。

小さい頃から言葉で伝えるのは苦手だ。そして素直になれない性格。幼馴染たちは言わなくてもわかってくれるから、伝える努力をしてこなかった。でもそれじゃダメなのか。

気づいたらAの家の近くの公園に来ていた。メッセージを打っては消して、発信ボタンと睨めっこ。そんな事を繰り返していたら、聞き慣れた声がして咄嗟に木の影に隠れる。

ベンチに座ったのは紛れもなくA。という事は隣は目黒か。こっそり2人の様子を見ていると、徐々に近づく目黒の顔。その後、彼女は足早に去っていった。

…は？まさかキスしたの？待ってパニック。え、もうそういう関係？無理ムリむり。

その後の記憶はほぼ無い。
恐らくそのまま実家に行って、死んだように眠ったのだろう。

翌朝、母親に叩き起され慌てて仕事に向かう。
実家に少しだけ服置いてあって助かった…。

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