90 深澤side ページ41
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深澤side
目黒に強引に手を引かれ店をあとにしたA。
全員が呆気にとられていると翔太が最初に口を開いた。
渡「見た？今の…」
宮「うん」
深「すんごい睨まれちゃった」
店を出る直前に振り返った目黒は殺気を帯びており"今後一切近づくな"と言われている気がした。
渡「まあ辰哉も良くなかったけどな」
深「ええ？」
宮「仮にも彼氏の前で、自分のグラスをね…」
深「そうかもしれないけど！ムカついて！何あの手！」
渡「それは分かる。あいつ結構やばいかも」
宮「独占欲すごそうだね」
あんな挑発的な態度とられたら大人でなんていられない。
俺らの方が親密であると分からせたくなった。
その結果、Aは連れて行かれてしまったんだけど…
深「涼太はさ、なんで花火大会の話題振ったの」
宮「とっくに約束済みかな…と思って」
渡「辰哉は会社の人と行くんじゃねーの」
深「…行かないよ」
小さい頃は幼馴染たちと行っていた花火大会も、大人になってからはそれぞれ楽しんでいた。ここ数年の俺は会社の人たちと行っており、今年もお誘いはあったけどすべて断った。もしかしたら幼馴染で行こうってなるかもしれないと思ったから。
宮「珍しいね。翔太は？」
渡「行かねー」
宮「そっか。俺は店あるから無理だけど、2人で行くのはどう？」
深「えっ…」
渡「ふーん。俺とは嫌なんだ」
深「そういうわけじゃ」
渡「まぁ俺もヘアセットしすぎてヘトヘトだろうし、終わったらココ来るわ」
深「俺も来る！」
宮「楽しみにしてるね」
もちろん翔太と行くのが嫌なわけじゃない。
でも、Aたちに遭遇する可能性があると思ったら気が進まなかった。それならここでみんなと楽しく過ごしたい。
深「…A大丈夫かな」
俺が煽っちゃったんだけど、ふと連れて行かれたAの事が気になってきた。嫌な事されてない？
渡「んー、大丈夫だろ」
宮「きっとAには優しいだろうしね」
俺は目の前にある白色のカクテルを見つめる。
Aが飲んだグラス…。実はちょっと試してた。
グラスを差し出したらどんな反応するかなって。
何のためらいもなく飲む姿を見て、やっぱり俺は"男"じゃなくて"幼馴染"なんだなって痛感した。だって相手が目黒だったら、少しはためらうでしょ？
そんな事を考えながら一口飲むと、口いっぱいに広がる優しい甘さ。
深「……美味しい」
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作者名：あんこ | 作成日時：2023年9月28日 6時
